僕らの夏休みはキリギリス釣り

ひろ〜

甲高いおばさんの声が淀川の土手に響く

入道雲が高く空に湧き上がり

炎天の土手は草いきれでむんむん

麦わら帽子にエプロン

朝鮮のおばさんが

長い竹竿の先に付けたタマネギを草むらの中

チェッチェッと軽く舌打ちをしてやると草むらの向こうからギーっと鳴き返してくる

誰に教わったわけでは無いが

子供の頃から身についた・・・夏休みはキリギリスを釣るのである

等間隔・・・立ち並ぶ人たち

タマネギの付いた竿先を草むらに

運良く竿先に止まったキリギリスを慎重に・・・

決して手で触れないところが味噌である

人間が直接手で触れると逃げるためキリギリスは自らの脚を切り離してしまうからである

そう・・・コレは売り物・・・商品なのである

虫屋のオヤジのところへ持ち込み幾ばくかの小遣いにするのである

私達の子供の頃は夏休みイコール海・山・旅行は・・・別の世界の話である

予め用意したお菓子の空き箱に

空き箱の中には事前に取っておいた土手の草を・・

キリギリスが箱の中で暴れないように

古い話ではなくほんの30年前までの大阪の風景である

人生の流れは早い

京都から阪急電車

梅田の高く立ち並ぶビル群の到着までの・・・3分手前の場所には

今も変わらぬ土手の草むらが目に飛び込んでくるのである

もう・・・長い竿を持ち

立ち並ぶ人々の姿の無いことに

一抹の寂しさを感じるのである